ブランコ作業は無足場工法の1つ
ブランコ工法などと呼ばれ、文字どおり「高所からロープで吊られたブランコ」に乗って、各種作業を行います。
今となってはロープアクセス専門の工事会社となった4Uですが、ロープアクセスを学び運用する前は、元々ブランコ作業(5〜10年程度の経験者多数)でした。
「ロープアクセス」という言葉やシステムが広まり、少しずつ認知も高まってきておりますが、当時は情報が少なく知識を得るのも大変でした。
そんな当時を振り返ってブランコ工法を考えてみようというのが、今回のThe ROPES。
ブランコ工法を経験することなくロープアクセスで活躍している、若手スタッフにも読んでもらいたい記事です。
ブランコ作業の経験者を確保
まずは、現場を終えて早めに戻ってきたブランコ経験者を確保!
ロープアクセスラボのメインインストラクターとして、みなさんと顔を合わせることが多く、安全に関してとりわけ厳しい2人です。
当時の様子を再現してもらうには、うってつけといえます。
片付けの合間を見て
昔、ブランコで作業していた時の様子を再現してもらえませんか?
と聞いてみました。
ということで、まずは準備を進めます!
ブランコ作業装備の一例
まずは倉庫を物色し、ブランコ用の器具や装備を集めます。
当時のブランコ用装備は、ほとんど残っていないので出来る限り近いもので代用します。
ポリロープは、現在使用しておらず11mmのセミスタティックロープを代用。墜落静止用のロリップを見つけましたが、インストラクターの安全のため「Petzl アサップロック」に変更しております。
こんな感じにブランコを組みました。
ブランコ作業の再現スタート
笑顔で協力してくれたインストラクター2人。その笑顔から「余裕」を感じ取ることができます。
万が一にも備えつつ安全な環境で再現をスタート!今回ブランコに乗るのは、石澤インストラクターです。
久しぶりのブランコ
まずは、脚立を使用して高所からのアプローチを再現していきましょう。低所とはいえ、ケガの可能性がありますので注意して乗り込みます。
エイト管にロープを巻き付け固定します。そろりと足をブランコに乗せ、体重の乗せつつ両手でロープを掴み、片足ずつ滑り込むようにブランコに座っていきます。
当時の装備ですとフルハーネスを着用していませんでしたし、ブランコ本体と身体を接続することもなかったようです。
ロリップと安全帯の使用で、いちおう身体とロープは繋がっていたそうですが、ブランコからは落ちてしまう可能性がありました。めちゃくちゃ怖い状況です。
「ヒェー!」悲鳴あげながら腕力を頼りにブランコに乗り込む。
この乗り込みをビルの高さで行うことを想像するだけでも・・・恐ろしい。
久しぶりのブランコに、無事座り込むことができた石澤インストラクター。
しばし体力と精神を回復する。
おだやかな時間w
ブランコで下降する
ほっとするのも束の間。固定しているロープのグルグルを解いて下降していきます。
このエイト管の固定ロープを解いてしまうと、握ったロープから手を離した瞬間に落下してしまう危険な状況になります。エイト管より下側のロープをプルージックで結んだり、ロープクランプ(当時はPetzl シャントなどを使用)を使用してバックアップを取る方法もあるかとは思いますが、今回は下降距離が短いので手だけ。
もし手を離してしまったら、スルスルと降りていくのではなく、スッと本当に落ちるスピードで落下します。(今回の装備ですと、墜落はアサップロックが止めてくれます)
当時、スっスっ、スィーと華麗に降りていたであろう石澤インストラクター。
その表情に、はじめの余裕は見えません。
大丈夫だと思って運用していたブランコ作業の危険を痛感している様子です。
ロープを両手で掴み、一見笑っているようにも見えますが、目は笑っていません。
ブランコでの登り返し
ついでにブランコでの登高にもチャレンジしますが、どうやら苦戦している模様です。
ロープアクセス用品の安全と快適さを知ってしまった人間に、ブランコの登り返しはとてもハードになってしまったようです。
石澤インストラクターがブランコでの登高で汗を流している様子を眺めていますと、やはりロープアクセス用下降器のセルフブレーキ機能がすばらしくて、登り返しにも便利ですし安全なんだな〜と再確認することができました。
チェストアッセンダーを使用しますと、いっそう効率が高まって登り返しも楽ちんです。
さらには、パワーアッセンダーという充電ドリルを使って反則的にロープ登高したり、重量物を引き上げることのできる便利なメカニカルデバイスも現場で大活躍しています。
しばらくして、力尽きた石澤インストラクターは地球に降りてきて
いや〜、これでよく仕事できてたわw
と道具の進化を再確認しておりました。(あくまで個人の感想です)
ブランコとロープアクセスは、ロープを使った高所で作業をする無足場工法として、一見同じように見られることもありますが、全く別のシステムと思っていただいて間違いないでしょう。
特に違うのが使用するデバイスの安全性。手元のコントロールだけでなく、起こり得るヒューマンエラーを未然に防いでくれる機能を持った商品も多く存在しています。
しかし、デバイスがいくら進化したところでアンカー(支点)から身体まですべての接続が正しくされていないと意味を持ちません。アンカーの強度、接続している結び目、カラビナ、ロープの摩擦防止養生など、ロープアクセスは連結したシステムです。
1つでも欠けてしまったら安全ではなくなりますので、慣れることなく毎度気をつけていきましょう!
今回は、当時のブランコ運用システムを手元にあるもので再現しましたが、私たちの運用するロープアクセスの安全性の高さと高い効率を再確認する良い機会となりました。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございます。
ベンチシート(ワークシート)のご紹介
今回ブランコ板として使用した「ベンチシートやワークシートと呼ばれるロープアクセス用の作業シート」は、フルハーネスに接続して長時間作業を快適にするアイテムです。
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Seat for SEQUOIA®(セコイア用ベンチシート)
¥19,470 (税込) -
PODIUM(ポディウム)
¥29,700 (税込)
ロープアクセスラボでは、各メーカーのフルハーネスなどのギアはもちろん、ワークシートも実際に座ってお試しいただけます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。